⽇本海おむすび旅【北陸エリア】敦賀市編

はじめまして!『旅するおむすび屋』の菅本香菜です。
日本全国を旅しながらおむすびを学ぶ中で、地域の食文化やそこに関わる人の魅力を発見・発信しています。

今回は日本海に面する北陸エリアを旅してきました^^
福井県敦賀市が旅のスタート!東京駅から新幹線で米原駅まで向かい、そこからJR特急しらさぎ号13号に乗り換え。計約3時間で敦賀駅に到着しました。

①敦賀ふぐ&敦賀真鯛の漁師さんが営む『中村旅館』

敦賀で最初に向かったのは、『中村旅館』さん。
漁師である中村英樹さんがご家族と共に営んでいる旅館です。
中村さんは敦賀ふぐや敦賀真鯛を養殖していて、敦賀真鯛に関しては“養殖真鯛”をブランド化した第一人者。
旅館に到着後すぐに目の前の港から船に乗せてもらい養殖場の見学をさせてもらえることに。敦賀真鯛が生まれるまでのストーリーを聞きました。

「せっかくこだわって育てた真鯛が“養殖の鯛”としか呼ばれないのが寂しかったんよね。ブランディングしたいとかそんな大きなこと考えてた訳やなくて、 何か名前をつけてあげたいってことで“敦賀真鯛”って名付けたんよ」

船の上でたくさんお話を聞かせてくださった中村さん

だんだんと敦賀真鯛という名前が知られるようになったことで、漁師さんたちの意識が変わっていったそう。

「自分たちが名前をつけた魚の評価を下げるのは嫌やんか。“ヤバイちゃんとせなあかん、みんなで良いもん作ろう”ってなったんよね。自分で自分にプレッシャーかけて、変なことしてしもたで〜(笑)」
とユーモアたっぷりに話してくれる中村さん。

もちろん敦賀真鯛や敦賀ふぐの評判が高くなったのは、名前がついたからだけでなくちゃんと美味しいから。

「この地域は1年通して平均的に海水温度が低いから魚がゆっくり育つんで身が締まってるし、外敵になるような生物が少ないから健康的に育つ。養殖やから餌も妥協せずしっかりこだわる。だから旨いんやと思うで。日本海側は波が高いから養殖しとる地域なんかほんま少ないんやけど、敦賀湾はリアス式海岸で比較的波が穏やかだからできるんよね。日本海の海の質で養殖ができる貴重な場所やと思うわ」

餌の質や量など徹底的にこだわって育てられている鯛

ここまで聞いたら鯛もふぐも早くいただきたい!ということで、旅館の厨房をお借りしてクッキングタイム。今回は中村さんの奥様や息子さんにもおむすび調理をサポートいただきました。
息子さんは県外で修行を積んでこられた料理人さん。アイデアがどんどん膨らんでいって、5種類ものおむすびが完成しました!

キッチンでワイワイお料理!

1)鯛めしむすび
中村旅館さんで大好評の絶品鯛飯をおむすびに。出汁の効いたごはんに、キュッと身がしまって脂がのった鯛がたっぷり、そして生姜の香りがふんわり。悶絶ものでした…。

2)真鯛の塩こんぶ和えむすび
敦賀はよく昆布を食べる地域。塩こんぶを和え物によく使うそう。今回は敦賀真鯛のお刺身と塩こんぶを和えたものをおむすびに合わせました。焼き海苔の代わりに昆布シートに包んで食べるとまた美味でした。

3)ほぐし真鯛のさっぱりカラフルむすび
焼いた敦賀真鯛をほぐして、梅干し・青じそ・たくあんを刻んだものを混ぜ合わせておむすびに。見た目が鮮やかでまず見て美味しい、そして真鯛の甘味とサッパリ薬味の相性も抜群でした!

4)敦賀ふぐとすだちのおむすび
柑橘と相性が良いふぐ。徳島で教えていただいたすだちのおむすびにヒントを得て、焼きふぐのほぐし身とすだち果汁を合わせてみました。すだちの香りとふぐの優しい甘味が上品に重なり合う大人のおむすび。

5)ふぐ天むす
サクッとほくほくプリプリのふぐ天から肉汁?ふぐ汁?がじゅわっと。こんな贅沢な天むすは人生で初めてです・・。

写真向かって左上から時計回りに、鯛めしむすび・ふぐ天むす・敦賀ふぐとすだちのおむすび・ほぐし真鯛のさっぱりカラフルむすび・真鯛の塩こんぶ和えむすび

中村さんもそれぞれ召し上がりながら「これええやん!美味しい!」を連発してくれていたのが嬉しかったな〜。

中村旅館さんに宿泊の際は、事前に予約をすれば鯛めしなどご用意いただけます。目の前の海で育てられた新鮮な敦賀真鯛や敦賀ふぐ、ぜひご堪能ください。釣り用ボートなどの貸し出しもされているので、釣り好きの方にもオススメですよ◎

中村さんご家族。温かい時間をありがとうございました!

②『現代の名工』に選ばれた手すき昆布職人 別所さん

敦賀市は、おぼろ昆布の発祥地です。
江戸時代に日本海海運で活躍した北前船で、北海道から敦賀に入ってきていた昆布。その昆布のカビを割れた茶碗で削ぎとっていたことから生まれたのがおぼろ昆布なのだとか。

今でも日本一(つまり世界一)おぼろ昆布職人さんが多い敦賀市の中で、『現代の名工』にも選ばれた別所昭男さんの元を訪ねました。

「じゃあ早速削りましょうかね」

と、昆布を片足でグッと踏んで固定をし、四角い大きな包丁で昆布をすき始めた別所さん。スイスイスイ〜〜っと、ふわっふわのおぼろ昆布が別所さんの手元にどんどん生まれていきます。

1枚の昆布からおぼろ昆布がスイスイと生まれていきます

「これが0.01mm、これが0.1mm」
手の角度を微妙に変えながら昆布の薄さを調整されているのできっと薄ければ薄い方が難しいんだろうなって思っていたら

「0.1mmの“竹紙昆布”は私しか削れる職人がいないんですよ。だから注文が入る限り辞められないんです。老後は喫茶店でもしようと思ってたんだけどね〜(笑)」とのこと!

さすが現代の名工。手すき昆布は機械でも再現できないそうです。
削りたて昆布をいただいたので、パクリ! 0.01mmのおぼろ昆布はトロトロ〜っと舌の上で溶けていき、0.1mmのおぼろ昆布はハリがあって噛むほどに旨味が出てきました。薄さでこんなに表情が変わるなんて。昆布って面白い。

様々な厚さで昆布を削ってくださいました!

今回は特別に昆布すきも体験させてもらいました。その道60年の別所さんのようにいくとはもちろん思っていなかったのですがやってみると想像以上に難しい!!包丁がキシキシと音を立ててなかなか昆布の表面をうまく滑ってくれません。

「昆布をすく時は息を止めるんです。手元がぶれないように」

ちょろちょろと少し昆布が削れたら「お!いいよいいよ!」と盛り上げてくれる別所さん。優しい・・。

なかなか上手に削れません

たくさんの昆布が削れたので、こちらをおむすびに。
別所さんのオススメは、おむすびにおぼろ昆布を巻いてトースターで焼くもの。昆布はすぐ焦げてしまうのでトースターの中を確認しながら焼いていきます。
おぼろ昆布が濃いめの狐色になってきたら完成!
温かい内にいただいてみると、昆布の旨味や甘みに香ばしさが加わって新感覚。とっても美味しい!これは家でも殿堂入りしそうです♪

ほんのり香ばしい新しい昆布の楽しみ方!

柔らかい笑顔と楽しいお喋りで迎えてくださった別所さん、本当にありがとうございました(^^)

ノリがとっても良い別所さん

③気比神宮でお参り

敦賀の観光名所でもある気比神宮。街の中に大きくて立派な鳥居が現れます。
こちらは『広島・厳島神社』『奈良春日大社』と並ぶ日本三大木造大鳥居のひとつで、国の重要文化財に指定されています。

主祭神である伊奢沙別命(いざさわけのみこと)は御食津大神(みけつおおかみ)とも称される、食物を司る神様。”気比”という地名は「食の霊(けのひ)」が由来とされているそうです。食べものに関わらせてもらっている一人として、きちんとご挨拶させていただきました。

街の中で存在感を放っている立派な鳥居

④金ヶ崎緑地でソフトクリーム休憩

お参りを済ませた後は、神宮側にあるオシャレなお茶屋さん『中道源蔵茶舗』さんでお抹茶ソフトクリームを購入♪そこから車で3分ほどのところにある金ヶ崎緑地で、心地よい海風にあたりながらいただきました。

そよそよ気持ち良い海風と抹茶ソフト。最高の組み合わせ。

お腹いっぱいになったので、芝生でお昼寝〜。
旅にもこんな余白時間があると嬉しいですよね。

芝生って寝転びたくなる

敦賀の食を通して人の温かさに触れた時間。
敦賀駅には2023年度末頃に新幹線が開通する予定です。気軽に来れるようになるのは嬉しいし、更に盛り上がりを見せてくれそう。楽しみです。
日本海おむすび旅 北陸エリア編。次は長浜市へ向かいます!