⽇本海おむすび旅【新潟・佐渡エリア】新潟市編

みなさん、こんにちは! 『旅するおむすび屋』の菅本香菜です。
日本全国を旅しながらおむすびを学ぶ中で、地域の食文化やそこに関わる人の魅力を発見・発信しています。

関西そして北陸エリアと続けてきた『日本海おむすび旅』。最後は新潟市&佐渡市にお邪魔してきました。

同じ新潟県内でも異なる魅力を持っている2つの地域を、おむすびを通してお伝えします。

新潟市の主要駅新潟駅まではJR新幹線ときに乗車した場合は約2時間、新宿駅からバスに乗車した場合は約6時間で到着します。

①名前通り人情味に溢れる『人情横丁』

新潟駅から車で約5分の場所にある『人情横丁』。着いた瞬間に「あぁ、この場所好き!」ってなりました。お客さんや通り過ぎる人々を長い間見守り続けてきたであろう趣ある看板たち。軒先に吊るされた野菜や魚。毎日食べてもきっと飽きない暮らしに馴染むお惣菜の数々。どのお店も気になって仕方がない。

入り口の看板からそそられます

大きな鮭が軒先に吊るされているのを見つけて思わず立ち寄ってしまった石山商店さん。

「新潟ではお正月などによく食べられる新巻鮭です。どのくらいの干し加減にするかは、人によって好みが分かれるんですよ」

突然の訪問にも関わらず丁寧に説明してくださいました。

寒い中でじっくり干されて旨味が凝縮していく鮭たち

「ちょうどおでんに味がしみてきたので温めましょうか?」

と、おでんまで出してくださって。
黒電話が似合いそうなとってもレトロな店内でハフハフしたら、心も身体も温まりました。
おもてなしに感謝を伝えたら

「またいつでも来てくださいね。新潟を盛り上げるためなら何でもするから」と。なんて愛に溢れているんでしょう・・。

おでんには人の温かさも染みてると思う・・

おでんでお腹が温まったら、私の空腹が目を覚ましたよう。良い香りに敏感に。

朝ごはんの幸せな光景が思い浮かぶような香りの方へ向かって行くと、香ばしく焼けた魚たちがパチパチと音を鳴らしながら歓迎してくれました。

串を打った魚の切り身を丁寧に焼いているのは阿部鮮魚店の阿部さん。

お母様が始められたお魚屋さんを受け継ぎ、魚を焼いて提供するスタイルを生み出したそう。おすすめを伺うと「銀だらの醤油漬けが美味しいよ」と。阿部さんの息子さんも帰省される度に必ずリクエストする、阿部さん自慢の一品だそう。

火に近付けたり遠ざけたりしながら絶妙な焼き加減に

「はい、どうぞ!」焦がし醤油の香りに吸い寄せられるように一口頬張ると、カリッ!フワッ!ジュワ〜!カリカリとフワフワの共存は、直火でじっくり焼いたからこそ成せる技。たまりません。 私が美味しさに悶絶しているところを、阿部さんは「よかった」とおっとりとした笑顔で見守ってくれていました。

名残り惜しく最後の一口を終えて、阿部さんとお別れ。「本当にありがとう」とずっと手を振りながら見送ってくれました。また絶対来ます。

阿部さんの笑顔にきゅん

人情横丁、最後に訪れたのは落花生など豆菓子を中心に販売している笠原豆店

お店に入ろうとすると「お待たせ〜〜〜〜!」と、ピンクのバンダナをしたお母ちゃんが自転車で登場!地元でも有名なピーナッツ姉妹のお姉さんです。

昭和映画の世界に迷いこんだと錯覚するような登場シーン

91年続くお店は、ピーナッツ姉妹が受け継ぎ三代目。可愛いバンダナとエプロン姿でトークを繰り広げてくれる姉妹は、商店の店員さんというよりエンターテイナーです。

訪問した時期はちょうど落花生の旬。「落花生はこぎたて(掘りたて)が美味しいんよ!茹でたから食べて!」と、お庭で掘ってきてくれた落花生をお裾分けしてくれました。 生から茹でた落花生は普段食べるいわゆる“ピーナッツ”とは違って、ほっくりした食感を楽しめます。枝豆に替わる存在になれそう。 「お酒にも絶対合いますね」なんて私が口にしてしまったものだから「あ!あるわ!あはははは〜〜」とお酒までご馳走になってしまいました。 気前の良さがすごい。お二人の話しが面白すぎてついつい長居してしまいましたが、そろそろ出発時間。「次は嫁においで〜〜〜!」という言葉を投げかけてもらった時に 「ここで暮らしたら毎日が絶対楽しいな」と想像しちゃいました。

人情横丁は、人情に富んだ最高の商店街でした。

②ライスガールズに学ぶ、新潟のお米が進みすぎる逸品

ライスガールズなる、お米界のアイドルが新潟の郷土食を使ったおむすびを教えてくれるとのことでお会いしに行ってきました!迎えてくださったのは新潟市の岩室地区でお米や食用菊りゅうのひげなどを育てていらっしゃる阿部マサ子さん。

マサ子さんのご自宅にお邪魔すると、さっそく良い香りが…。見たことのない木製の道具で黒ゴマを丁寧に押し潰していました。

『きりあい』を作り始めてるんよ。ゴマはするよりも潰した方が香りが出るの。はい、これやってみて!」

自己紹介をほとんどする間もなく一緒にお料理スタート!働きもののお母さんスタイルに巻き込まれる感じ、大好きです。

黒ごまを押しつぶす度に良い香りが・・

着いて早々作り始めた『きりあい』は、新潟で昔から愛されている郷土食。マサ子さんはきりあい作りの名人として地元で知られているそう。
黒ゴマを潰し終えたら、マサ子さん手作り長期発酵させた大根味噌漬けを細かく細かく刻んだものと合わせて、柚子皮や砂糖で味を整えます。
見た目は真っ黒、決して"映える"見た目ではありませんが、絶対に美味しいと確信できる香りが漂ってきます。この黒い見た目には面白いルーツが。江戸時代に「農民が贅沢している!」とお上に目をつけられないように、真っ白なご飯にきりあえをびっしりと振りかけて隠していたそうです。リスクを負ってでも美味しい白飯が食べたいという熱い想いが生んだ郷土食だったんですね。

見た目は黒いふりかけのよう!(撮影 菅本)

次に準備を始めたのは鮮やかな黄色が美しい食用菊『りゅうのひげ』を使った混ぜご飯です。変色を防ぐため軽く酢水に漬けておいたりゅうのひげを熱々のご飯に混ぜると、目の前に菊畑が広がったかのような華やかな香りに包まれました。昔は地元のお殿様もこの菊ご飯を食べていたそうです。

釜からとっても華やかな香りが・・!

おむすび準備はまだまだこれだけでは終わりません。「はい!次はこれをするよ!」と、丸いお麩を使った『麩寿司』や、生姜のきいた味噌で焼きおむすびにした『けんさ焼き』などテキパキ準備しながら作り方を教えてくださいました。

たっくさんのおむすびが完成した時にはお腹ぺこぺこ!いただきます〜〜!

私が一番感動したおむすびは、菊ごはんにきりあいを混ぜこんだおむすび。
真っ黒のきりあいにいい感じに華やかさがプラスされました。この楽しみ方はマサ子さんも初めてだそう。菊の華やかな香りの後に、きりあいの塩気や香ばしさが新潟のお米の甘さを引き立ててくれます。

菊ごはんのおむすび(左)ときりあいと菊のおむすび(右)

「これ、美味しいね!今まで何でこの食べ方してなかったんだろう」と、マサ子さんも気に入ってくださったみたい(^^)

地元の方と新しい発見ができるのは、本当に嬉しい。

マサ子さんにたくさん元気をもらったおむすび時間。お米界の先輩として、これからもたくさん学ばせてもらいたい方に出会えました。

たくさんの種類のおむすびが完成!美味しくいただきました

③笹祝酒造さんで酒づくり体験

新潟の地酒として愛されている笹祝酒造さんの日本酒。

杜氏さんも地元の方が中心で、「地元に住む自分たちが美味しいと思うお酒を造る」ということを意識されているそうです。

普段から酒蔵見学を受けいれられている笹祝酒造さんですが、今回は特別に酒造りの体験もさせてもらえることに。白衣を着て帽子をかぶり、いざ蔵へ。歴史を感じる建物ながらとても清潔に保たれていて、神社の鳥居をくぐるのと同じように神聖な場所に足を踏み入れた感覚になりました。蔵の奥に進むと、大きな蒸し器から湯気がモクモクと上がっています。酒米をちょうど蒸し終えたタイミングでした。ここから、麹用の酒米と酒母や仕込み用掛米の酒米とを分ける作業が始まります。特大スコップを持って蒸された酒米をすくって仕分けしていく作業を体験させてもらいました。ザックザックと酒米をすくっていく杜氏さん。私はというと、酒米が重たくてなかなか作業が進みません。冬場の取材でしたが、すぐに汗ばんできました。酒造りが体力勝負だということは、知っているつもりでしたがほんの一部でも体験させてもらったことで想像から確信に変わりました。杜氏さんに感謝して大事にいただこう。

体験とは言え真剣です

体験を終えたら、最後は日本酒の試飲をさせてもらえることに!働いた後のお酒は最高!ということで色々なお酒をいただきました。創業120年を越える酒蔵ですが、守るところは守りながらも新しい挑戦も続けられていて、お酒の種類は全部で20種類を越えるそうです。酒米の種類から仕込み方まで、様々な工夫をされています。どれもとっても美味しかったのですが、私のお気に入りは『サササンデー』。サッパリ甘酸っぱくて軽い飲み心地。太陽が出ている昼間からでも、明日から仕事が始まる日曜日でも飲める飲めるというのがコンセプトなんだとか。パッケージもとっても可愛いので女子会にもピッタリ!お土産にもぴったりなカップ酒を購入して笹祝酒造さんを後にしました。

たくさんの種類から好みを見つけられて楽しい!

④北方文化博物館で新潟の豪農の豊かさに触れる

新潟市にある小さな集落、沢海(そうみ)にある北方文化博物館へ。ここは、代を重ねて豪農の道を歩み越後随一の大地主となった伊藤家の元邸宅です。 第二次世界大戦後に、七代当主が「博物館をつくり、財産の全てを寄付する」という決断をし、建物・庭・美術品を後世に残すための博物館を創設しました。

庭師が細部までこだわった美しいお庭、ただきらびやかという訳ではない心が落ち着く空気をまとった室内。八代目当主が「心のご馳走を求めていらっしゃってください」とお客さんをお迎えし、伊藤邸を大切に守り続けてきた想いが伝わってきます。

特に注目したいのは大広間棟のお座敷。柱の少ない開放的なお部屋が庭園との一体感を生んでいて正座をして心静かに庭を眺める時間がとても贅沢です。人気アニメに出てくるお座敷にソックリということでも有名になった場所でもあります。

このシーンに見覚えがある方もいるのでは?

博物館内には食事処もあり、釜炊きの新潟コシヒカリや郷土食も楽しめます。ぜひゆっくりと時間を過ごしに行ってみてください。

⑤岩室温泉『ゆもとや』で旅の疲れを癒す

様々な場所を巡って心地よい疲れが出てきた夜は、やっぱり温泉で癒されたい。新潟市内の岩室温泉にある『ゆもとや』さんにお邪魔しました。身体の芯から温まって、お風呂あがりには笹祝酒造さんの日本酒と、旅先で出会った食材で晩酌。最高の旅の締めくくりになりました。

お風呂上がりのお酒ってなんでこんなに幸せなんでしょう

日本海おむすび旅 新潟・佐渡編、お次は佐渡島へ渡ります!